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現場視察

開催概要

日時
2025年8月8日
場所
サミットストア世田谷船橋店
内容
労働災害防止対策の取組活動報告、店舗見学

実施模様

首都圏を中心に約140店舗を展開する食品スーパーマーケット「サミットストア」にて、安全衛生部長による安全視察を実施

厚生労働省では、労働者の安全と健康が確保されていることを前提に、多様な形態で働くすべての従業員が潜在力を発揮できる社会の実現に向け、2023年4月から第14次労働災害防止計画をスタート。この計画に基づく対策の推進の一環として、厚生労働省労働基準局安全衛生部長による小売業の店舗への視察を行っています。

2025年8月8日に実施された視察の対象となったのは、作業時の労働災害や高年齢労働者、外国人労働者の労働災害防止に向け、積極的な取り組みを進めている大手スーパーマーケット・チェーンのサミット株式会社の世田谷船橋店。店舗フロアからバックヤードまで、細部にわたって実施されている労働災害防止対策を視察しました。

今回の視察先となった「サミットストア世田谷船橋店」
過去に発生した事案を教訓に、作業環境等の改善を実施

首都圏を中心に約140店舗を展開するサミット株式会社では、多くの従業員を必要とする食品スーパーマーケットという業態から、約1万7500人の従業員中、外国人技能実習生600人、パート社員1万1400人、アルバイト2600人という多様な形態のスタッフが勤務しています。同社では、「労働事故防止は、人間の尊厳(命)の問題」という強い意識のもと、労働事故防止に向けた作業環境等の改善を積極的に推進しています。

厚生労働省労働基準局 安全衛生部の安井省侍郎部長をはじめとする職員は、サミット株式会社 執行役員の安田大輔さんの説明を受けながら、店内各所を見学しました。

シニア社員、外国人技能実習生など多様な従業員向けの取り組みも展開

まず、1階の店舗フロアから視察がスタート。サミットストア世田谷船橋店は2022年4月にオープンした比較的新しい店舗ということもあり、売り場に面した開口部の広い大きなガラス窓から店内での調理などを行う作業場を目にすることができます。売り場からすぐの「青果作業場」、「鮮魚おさかなキッチン作業場」、「ベーカリー作業場」「総菜作業場」へと場所を移しました。

各作業場では、作業中に移動する従業員や荷物の通る場所を確保するために、床に目印となる白線が引かれていたり、油で滑りにくい専用シューズの着用、熱中症対策として天井からスポットクーラーを設置するなど、従業員の安全を考慮した工夫が見られました。

作業場の床には滑りにくい素材が使用されている

そのほか、外国人技能実習生のために作業場名が記されたプレートには英語とベトナム語が併記され、壁には営業部員が考案した“労災事故ゼロ”を訴求するポスターが貼られているなど、安全な作業を行うための取り組みが随所に見られました。

英語とベトナム語が併記された作業場のプレート
営業部門の社員のアイデアが詰まった「安全手袋」着用を促すポスター

続いて訪れた2階ではバックヤードの「精肉作業場」を見学。過去に他店舗で発生した重大事故を教訓に、精肉部門でのスライサーを清掃する際は、機械の主電源だけでなく、コンセントからの通電をとめるブレーカーを設置するなど、徹底した対策を行っています。また、清掃時は、鋭利な丸刃による切創を防ぐため、防刃効果の高いステンレス製の「安全手袋(クサリ手袋)」の着用が徹底されているなどの説明を受けました。

精肉スライサー使用時は、細かい肉片を除去する場合もピンセットを使うなど徹底しています。
実際に「安全手袋」を着用し、その重量感を体験する安井 安全衛生部長(写真右)

また、従業員が往来する廊下の壁には「他店労災事例」の資料と改善報告書が掲示されていました。これは、他店での事故をすべての従業員が自分ごととして考える機会をつくり、同様の事故発生の予防に努めるための取り組みとのことでした。

なお、掲示されている資料の中には、「労災ゼロ」の実現に向け、同社社長の決意を表したメッセージである「安全衛生方針」を記した書面も。さらに、安全衛生取組の重点課題である「転倒事故」「切創事故」への注意については、商品陳列時に使用するポップのように、黒い紙に手書きのメッセージで目立つようにするなど、小売業ならではの発想を生かした工夫も見られました。

全従業員の目に留まるようバックヤードの廊下の壁に「他店労災事例」等の安全対策に関する資料を掲示
経営上の優先課題の一つとして「労災ゼロ」を目指す

店内の視察終了後、サミット株式会社の安田さんから、今後の課題と現状の取り組み状況の説明がありました。まず今後の課題として挙げられたのは、パート社員の約20パーセントを占める65歳以上のシニア社員の転倒事故の防止でした。現在は発生件数が減少しているとのことですが、2018年にシニア社員の転倒事故が急増したことを機に、視力・聴力・平衡感覚をチェックする「健康確認シート」をもとに、契約更新時に正社員とシニア社員の相互確認を実施。加齢による筋力低下等の状況確認を定期的に行っているとのこと。

また、企業全体で600人にも及ぶ外国人技能実習生(すべてベトナム人)に向けては、自社で製作した調理作業の工程を紹介する、字幕・翻訳機能付きの動画を活用した従業員教育を実施。日本語での指示が難しい作業内容の指導に活用しているとのこと。

そのほか、営業時間前の午前8時に店内で「作業前準備体操」の音楽を流し、従業員が体をほぐすことで労災事故の予防に努めているとの説明がありました。

最後に安田さんから「定例の店長会議や店長連絡会では、必ず労災事故の報告と改善策の共有を行っておりますし、店長会議においては労災防止が定例議題となっています。また、弊社では労災防止に向けた施策を本社人事部が主導するのではなく、現場をよく知る営業部門が担当しています。例えば、労災事故ゼロを訴求するポスターにしましても、単なる風景になっては意味がありませんので、営業部門の社員がさまざまなアイデアを出して取り組んでいます。まだまだ改善すべき点もあると思いますが、今後も従業員が安心して業務に当たれるよう、労災ゼロを目指していきます」との説明がありました。

店内の視察終了後、安井 安全衛生部長からサミット株式会社の労災事故防止の取り組みに対する講評がありました

これを受け、安井 安全衛生部長からは講評として「労働災害防止は、人間の尊厳の問題だという強い意識のもと、さまざまな取り組みをしっかり実施されていると感じました。また、店長会議などで労災事故防止を議題にするなど、この問題に経営陣がきちんと関与し、安全な職場環境と働き方の重要性を訴求し続けることは、とても大事なことだと思います。ぜひこのまま継続し、労災ゼロを目指して頑張っていただければと思います」との激励があり、今回の視察が終了しました。