現場視察・見学会
現場視察実施企業
見学会実施企業
開催概要
- 日時
- 2025年10月22日
- 場所
- 社会福祉法人青谷学園
- 内容
- ノーリフティングケアなどの労災防止取組紹介、施設見学
実施模様
労働災害の防止、安心して働ける職場環境づくりを目指してSAFEコンソーシアム会員事業者参加による「安全衛生見学会in京都」開催
2025年10月22日、厚生労働省 SAFEコンソーシアム事務局では、労働災害防止と安全な職場環境づくりを目的に、コンソーシアム会員事業者による「安全衛生見学会in京都」を開催しました。今回、視察先となったのは、SAFEアワード2024 サービス産業/「エイジフレンドリー部門」でブロンズ賞を受賞した、社会福祉法人青谷学園(京都府城陽市)。ミドル・シニア世代の職員が多く在籍する同法人の施設と労働災害防止に向けた取り組みを見学しました。
福祉介護業界が抱える「腰痛」予防の取り組みに尽力
1982年の設立以来、知的障害者支援施設の運営を行う社会福祉法人青谷学園。同法人は、60〜65歳の選択定年制に加え、定年後の再雇用は72歳まで、その後は雇い止め年齢なしの有期雇用を採用しています。そのためミドル・シニア世代の職員が多いことに加え、福祉介護業界の職業病と言われている職員の腰痛が大きな課題となっていました。その対策として、「持ち上げない! 抱き上げない! 引きずらない! 中腰にならない!」ノーリフティング宣言を掲げてプロジェクトを実施。今回の「安全衛生見学会」では、施設を巡回しながら、その取り組みを紹介していただきました。
他社の好事例を参考にして自社の取り組みに生かす
当日は見学会に先立ち、厚生労働省 労働基準局 安全衛生部安全課の立石係長の挨拶からスタート。事例共有会への参加と協力に感謝を述べるとともに、SAFEコンソーシアムの目的の一つに、参加企業が安全に安心して働ける職場環境づくりに関して事例の共有があることを説明。今回の見学会を通じて、コミュニケーションをとりながら他社の取り組みを学び、自社の取り組みに生かしてほしいと呼びかけました。
また、近年の労働災害において「転倒」や「無理な動作」による「行動災害」が多く見られ、高年齢労働者では重症化しやすい傾向があることを指摘し、防止対策の強化を求めました。
さらに、厚生労働省が令和2年から推進している「エイジフレンドリーガイドライン」が、今後は法的に根拠をもつ「指針」として改定され、令和8年4月施行を目指していることを説明。最後に、行動災害防止の取り組みを積極的に発信・共有し、安全で健康的な職場づくりにつなげてほしいと述べました。
よる同法人の紹介とプロジェクト説明
続いて、社会福祉法人青谷学園 理事・障害者支援施設青谷学園 施設長の小林さんから、同法人が取り組んだプロジェクト「職員が健康で長く働き続けられる職場作り〜意識付けで全職員腰痛ゼロ!健康ファミリー青谷学園〜」について説明がありました。
また、今年度の取り組みとして、50歳以上の職員を対象に困り事をアンケートで把握し、ネッククーラーやスマホを見る際に使用する拡大鏡などを即対応で導入したことを紹介。
「些細な困り事はヒアリングをすれば、すぐに聞き出すことができます。それを放置せず、すぐに対応することで、職員がウェルビーイングを感じられるよう注力しています」との説明がありました。
職員の困り事に耳を傾け、即対応で改善
まず、事業所内見学で訪れたのは施設利用者に食事を提供するための調理場。調理員は衛生面への考慮から帽子・マスク・調理白衣を着用する必要があり、特に夏場は「食器洗浄機を使用する際に熱気がこもり、暑さが辛くなってきた」という意見を受け、サーキュレーターを導入。送風により空気を循環させることで熱気を逃して暑さがやわらげられるため、働きやすい環境改善に貢献しています。
同法人では職員全員にスマートフォンを貸与していますが、「老眼で文字が見にくい」という意見があったため、スマホルーペを導入。
職業病である腰痛予防のため、職員には腰痛ベルトを貸与し、着用が義務化されていますが、デスクワークの多い職員も腰痛に悩むことが多いため、同じ姿勢による腰や背中への負担軽減を目的に、高さが調整できるスタンディングデスクを導入。
また、デスクの下には長時間立つことで起きる足裏やかかとへの圧迫を軽減するため足置きマットが配置されています。
近年の猛暑により冷房を稼働していても仕事中に暑いと感じる職員が多いことから「ネッククーラー」を導入。水分補給に加えて、熱中症予防として利用されています。
同法人では1日2回(午前と午後)ラジオ体操を実施しています。業務時間中に行われるため、任意ではなく業務の一環として行われているそうです。
また、階段利用時の転倒リスクを減らすため、階段へと続くドアに転倒予防ポスターを張って注意喚起しているほか、階段に肉球のイラストを貼ることで昇降時に足底をしっかり置く意識付けでインナーマッスルが鍛えられる工夫も。それにより腰の負担が軽減し、腰痛を発症する職員ゼロが継続できているのだとか。
施設利用者用の大浴場には、座ったまま浴槽へ移動して入浴できるリフトチェアや、寝ている姿勢のまま入浴可能なストレッチャータイプの特殊浴槽を導入。なお、特殊浴槽は今年度中に最新式のものへと更新する予定とか。これらの機器を用いることで、利用者の身体への負担を減らすだけではなく、職員が腰をかがめた無理な体勢で入浴介助をしないことで、腰痛対策や労務環境の改善に寄与しています。
事業所内見学後には参加者による質疑応答が行われました。参加者からは、施設の快適さや整った環境、職員と利用者の双方が大切にされているという声や、施設内の照明の工夫や物品の配置など細やかな配慮が随所に見られるという感想がありました。
全体として、施設で働く職員一人ひとりの声が届き、同法人が掲げる「健康ファミリー青谷学園」を具現化した職場環境と文化が醸成されていることが、参加者に強く印象づけられた見学会となりました。
