現場視察・見学会
現場視察実施企業
見学会実施企業
開催概要
- 日時
- 2025年12月2日
- 場所
- 福岡市役所
- 内容
- バランスボールを活用した転倒災害防止の官民連携事例紹介、転倒リスク測定体験
実施模様
労働災害の防止、安心して働ける職場環境づくりを目指して
SAFEコンソーシアム会員事業者参加による
「安全衛生見学会in福岡」開催
2025年12月2日、厚生労働省 SAFEコンソーシアム事務局では、労働災害防止と安全な職場環境づくりを目的に、コンソーシアム会員事業者による「安全衛生見学会in福岡」を開催しました。今回、視察先となったのは、SAFEアワード2024年度 サービス産業/「企業等間連携部門」でゴールド賞を受賞した福岡市。労働災害発生件数が増加傾向にあり、対策の強化が必要な転倒災害防止に向けた取組として、全国でスポーツクラブを展開する株式会社ルネサンスとの協働で実現した、バランスボールを活用した事例を見学しました。
転倒災害の予防にバランスボールを活用
約160万人の人口を抱える九州最大の政令指定都市である福岡市。近年、福岡市役所では45歳以上の職員における通勤災害を含む公務災害が急増しており、なかでも転倒による事故が大半を占めていることが判明しました。その課題解決と防止を目的として、福岡市の公民連携窓口「mirai@」を通じて株式会社ルネサンスから提案のあった「バランスボールを活用した転倒災害予防のための実証実験」を2024年5月から実施しています。
今回の「安全衛生見学会」では、取組の背景と実施内容の説明に加え、参加者たちが職員と共に「転倒リスク測定会」を体験しました。
課題解決に向けた官民連携施策の背景
安全衛生見学会の冒頭、厚生労働省 労働基準局 安全衛生部安全課の中地氏から挨拶があり、労働災害の中でも、転倒や無理な動作によって起こる行動災害が年々増加傾向にあることを説明。また、業種の垣根を超えて安全対策を共有することが見学会の趣旨であり、福岡市の取り組みを自社の安全活動の参考にしていただきたいと呼びかけました。
次に、福岡市職員健康課の松田課長から「バランスボールを活用した転倒災害予防のための実証実験」の実施に至った経緯と内容、結果についての説明がありました。まず、福岡市では実証実験前に、平成25年度から令和5年度までの公務災害の件数と実態を調査しました。
それにより、約1000件の公務災害が発生しており、中でも転倒災害は40代以上が多くの割合を占めていること、年齢が上がるにつれ、骨折など重症化しやすい傾向があることが判明。この課題解決に向けて、株式会社ルネサンスから提案されたバランスボールを活用した転倒災害予防の取り組みをスタートしました。
続いて、株式会社ルネサンス 地域健康推進部の丸尾次長が、福岡市との連携に至った経緯を説明。同社では、全国的に労務災害における転倒事故増加の課題解決に向けて、厚生労働省や専門家のアドバイスを元に「転びにくい体を作る職場エクササイズ」と「転倒リスクの測定方法」を開発。その効果実証を得る目的と、開発したプログラムが課題解決に役立つ可能性を福岡市に提案し、両者の想いが合致したことで連携が実現しました。
「事後測定会」にて3種目のテストを体験
福岡市による「バランスボールを用いた転倒災害予防のための実証実験」は、日常的に運動習慣のない40歳以上の市職員100名を対象に、第1期が2024年5〜8月、第2期は同年の11月〜1月にかけて、それぞれ3ヶ月間実施されました。
事前に、下肢筋力・バランス能力・敏捷性を測る3種目の測定会を開催。同時に、転倒予防の必要性やバランスボールの正しい乗り方、休憩時間にも行える簡単なエクササイズのレクチャーも行うことで、3ヶ月間にわたる実証実験へのモチベーションを上げる取り組みも行いました。なお、楽しみながらエクササイズを継続してもらうための工夫として、株式会社ルネサンスから提供されるバランスボールの色やサイズを対象となる市職員が選べるようにしたそうです。
また、株式会社ルネサンスの提案で、測定会場にBGMを流してモチベーションのアップを図ったり、測定時には単独で参加するのではなく、2人1組のペアを組ませることで仲間意識が生まれるような工夫も行われたのだとか。
さらに、3ヶ月間の実施期間中も参加者が途中で飽きて離脱しないよう、激励メッセージのメールを送信したり、新たに作成したグループチャットを活用して情報共有や質問にも即時対応するなどの取組が行われました。
そして、3ヶ月後の事後測定会では、事前の測定会と同様に「片足立ち上がりテスト」「座位ステッピングテスト」「2ステップテスト」の3種目行い、実証実験前後の数値を比較。
その結果、イスに座った状態から行う「片足立ち上がりテスト」では、立ち上がれるようになった人が16.4パーセント増加。イスに座ったまま20秒間で何回足を開閉できるかを測定する「座位ステッピングテスト」は、平均回数が35回から39回に増加。直立姿勢から2歩で何メートル歩けるかを測定する「2ステップテスト」では、平均250.1cmが265.2cmに向上するなどの効果が見られました。
また、参加した市職員からは「姿勢が良くなった」、「腰、肩、膝の痛みが軽減した」などの身体変化だけではなく、「エクササイズを通じて職場のコミュニケーションが活発になった」、「運動を習慣化させるためにスポーツジムに通うようになった」などの声があり、転倒予防以外の効果が現れたそうです。
なお、福岡市では先に紹介した「転倒リスク測定会」に加え、バランスボールを使った新たなエクササイズプログラムの展開、各職場での安全パトロールや啓発活動など、転倒災害の防止に向けて、さまざまな取組を行っていることが紹介されました。
職員の健康増進、職場活性化にも寄与する取り組み
その後、参加者は庁舎内の講堂に移動し、市職員たちの事後測定会に参加。隣の人とペアを組み、自己紹介を行った後、バランスボールを用いたストレッチで体をほぐしてから、3種目の測定に挑戦しました。常に参加者に声をかけ続けるインストラクターの存在もあり、和やかな雰囲気で測定会は進行。「楽しみながら」ということがエクササイズを継続することにおいて大切であることが感じられました。
測定会終了後に行われた質疑応答では、定員拡大を含む今後の取組の見通しなどの質問があり、この見学会を通じて参加者の興味や意欲が高まったことが見て取れました。
福岡市の取組は転倒災害防止に向けた官民連携の好事例であり、安全衛生活動は災害の防止にとどまらず、職員の健康増進と職場活性化にも寄与することが示されるなど、参加者にとって有意義な「安全衛生見学会」となりました。
